子どもの塾は大丈夫?大手塾の悪質な実態とは

Keito

データアナリスト / 経営学修士 趣味はプログラミング、Nintendo Switch、カラオケです。

塾の実態

  1. 無意味な研修が行われ、素人同然の新人が授業を行う
  2. 指導できない科目を即興で授業させる

塾講師として働いたことのある方は分かると思うが、塾業界は慢性的な人材不足である。そして、その状況がサービスの質にも影響している。私はアルバイトとして某大手塾で働いていたが、その間だけでも十分すぎるほど、塾の悪質な実態を知ってしまった。努力はしたが、自分の提供するサービスが、頂いているお金に見合うものとは到底思えなかった。そこで本記事では、塾の悪質な実態の1つである「新人の授業」や「新人研修」を取り上げ、私の実体験ベースでお話ししたい。

この記事に目を通して頂けた方は、自分の子どもが通っている塾の講師は価値のある教育を提供しているか、一度疑ってみてほしい。大切なお金と時間を捧げる以上、多くの人に価値のある教育を受けて欲しいからである。大手塾だからと安心するのではなく、校舎にしっかり確認するべきである。

 

担当講師の実態、新人は危険

担当講師は新人ではないか?

塾業界では、時期的に区切りの良い3月(進級)や夏休み前後の入塾が多い。塾ではこのタイミングでクラス編成が成されるので、担当講師が変わることもある。そしてこの時期は、大学生が塾講師のアルバイトに応募してくる時期でもある。すなわち、入って間もない新人の講師が担当になりやすいのがこの時期だ。

大手塾では基本的に学生を使い回しているので、面談の際に講師が明らかに若く見えるのは当然である。保護者の方も担当講師が学生であることは承知の上だと思う(もちろんベテランもいる)。学生講師でも2~3年経験があればある程度の授業は出来るので、講師を信用できれば子どもを預けても良いかもしれない。

しかし、担当講師が新人だと分かったら、別の講師に変えることをお勧めしたい。その授業を受けていても、大金に見合うだけの効果は得られないからだ。

 

子どもは”練習台”にされていないか?

さて、新人講師の授業はどんなものなのか。新人の授業は、実にひどいものである。声が小さいし、板書が見づらい(文字が汚いのではなく、板書の構成が悪い)。その授業のポイントが分からない。授業は一方的で退屈。などなど、挙げればキリがないが、大半の新人講師は上記のような授業を展開する。当然、このような授業では生徒のモチベーションは上がらない。

*私は、授業自体で成績が伸びるとは思わない。授業とは、生徒のモチベーションを上げるものであると認識している。

もちろん、新人なのだからこれは仕方ない。しかし塾側も、新人が素晴らしい授業を提供できるまで育て上げる余裕はない。したがって、中下位のクラスは新人の”練習台”となる。実績を出す必要がある上位クラスはベテランが担当し、中下位のクラスにいる未経験の新人は質の低いサービスを提供しているのが実情だ。

新人は中下位クラスで実力を付け、次第に上位クラスへとシフトしていく。その成長過程では、どうしても練習台が必要なのだ。子どもがこの層のクラスにいる場合は、サービスの質を疑った方がいい。

 

子どもの「楽しい」は信用できないかも

サービスの質を測るのに、「塾の授業どう?楽しい?」と聞くのは適切でない。

「先生は明らかに新人だけど、子どもが楽しいって言ってるから大丈夫。

と、考えている保護者の方も実際に多いが、「合格する」という目標を掲げているなら、ここは慎重になるべきだ。実力が伴わなければ意味がない。

子どもが言う、「授業は楽しい」というのは、友達とお話しできて楽しいという意味かもしれない。学校と比べたら分かりやすい、という解釈もできる。

すなわち、比較する経験の少ない子どもが目新しい授業を受けた場合、その授業の本質的なレベルに関わらず、「楽しい、分かりやすい、面白い」と、授業を肯定的に捉える傾向がある。そして、親はその言葉を信じる。この結果、授業は頑張っているものの模試で成績が出ない、という状況が起こりがちだ。

したがって、子どもの言う「楽しい」はあまり信用できないかもしれない。

 

新人研修に隠された"2つ"のウソ

新人とはいえ、独自の研修プログラムもあるみたいだし、大丈夫でしょ。

このように考え、安心している人もいると思う。

実際にほとんどの大手塾は、「丁寧な研修をしており、講師のレベルを一定に保つ努力をしています」という旨で、研修の質が高いことをアピールしている。これはたとえ新人であっても、プロとしての授業を提供できるという意味だ。もちろん、保護者の方もそれを望んでいる。

しかし、この”丁寧な研修”という言葉には2つの大きなウソがある。実際には、新人研修を受けた講師は完全に素人である。プロとしての授業は一切提供できない。

ここからは、もっとも悪質な”新人研修”の実態をご紹介する。

 

役に立たない新人研修

1つ目のウソは、研修の内容がお粗末なものということだ。私が実際に受けた新人研修の例をご紹介する(あくまで私の例ということは念頭において欲しい)。

まず研修会場に着くと、塾内での基本的な動作を教わる。あいさつの仕方、保護者への対応の仕方など様々で、学生にとっては意義のあるものだった。ただ、授業に関わる部分の研修は大変お粗末なものだった。この授業研修で習ったことを要約すれば、「板書の仕方」と「初回授業での自己紹介」の2つに集約される。

さらに、実際の授業で活用できたのは板書の仕方だけだ。教わった自己紹介は非常につまらないもので、実際の授業では使えないのが誰の目にも明らかだった。

私としては、授業の組み立て方や、生徒の胸に刺さる喋り方、成績の上げ方等を教わりたかったのだが、それら重要な部分はマニュアルの読み合わせで終わった。正直、マニュアルの内容はあまり役に立つものではなかったと思う。すなわち、実務で役立つ研修ではなかった。上手い授業のポイントを重点的に教えなければ、授業研修には何の意味もない。

この後研修で説明されたのは、後ほど校舎にて模擬授業を行い、フィードバックを受けよ、とのことだった。なるほど、実践的な練習は模擬授業の方で、今回は知識重視だったのか。

 

形骸化している研修

後日、確かに模擬授業を行ったが、10分程度の短いものだったし、フィードバックは「〇〇先生はもう少し声を張れるといいね!」の一言のみで、流れ作業のように終わってしまった。

フィードバックをくれた社員はマニュアルが役に立たないと思っているようで、「本社の研修はほぼ意味ないよね」と言われる始末だ。さらに、研修が役に立たないことはどの校舎も認知しているようだった(全体研修の時に他校舎の講師から聞いた)。

すなわち、私が受けた新人研修は会社のメンツを保つために行われる、形骸化した研修だった。新人はあまり役に立たない研修を受け、晴れて授業デビューすることとなる。

つまりこの塾の新人講師は、初回授業時において素人同然の状態であり、そこでどんな授業が提供されるかは想像に難くない。研修では、「最初の授業で心を掴むのが重要」と教えていたはずなのだが……。明らかに矛盾している。

実際、初回授業時に生徒に印象付けを行うのは大事で、初回で失敗すると後々クラス運営が難しくなる。ド素人を初回授業に出すのは、それほど危険な行為である。

 

研修が行われた時期は……

さて、新人研修に秘められた2つ目のウソは、上記の研修が初回授業「後」に行われたことだ。私が現場に投入されたのは、研修を受ける前である。研修が始まったのは、既に3回ほど授業を行ってからだった。これはいくら何でも保護者の方を侮辱していないか

“丁寧な”研修が授業開始後に行われるのでは全く無意味だ。ただ、これでは研修として矛盾し過ぎているので、研修前に授業を行うのは自分の校舎くらいだろうと考えていた。

しかし研修会場に行くと、「既に授業を担当している方はいますか?」の質問に対して、50%が手を上げるのだから驚きを隠せない。研修を行う社員もこの実態を認知しているようだった。

私はこの研修で、「〇〇先生は既に授業を持っているから上手いと思ったんだけど、こんな授業で大丈夫なの?」と、批判を浴びた。「まともな研修も受けていないのだから当然だろう」、この言葉を発することは許されない雰囲気であった。

 

科目素人に授業をさせる実態

私が講師経験で一番驚いたのは、授業不可の科目を押し付けられたことだ。

私は英語が得意だったので、基本は英語、人が足りなければ数学も、という形でシフトを組んでもらった。これ以外の科目は自信がなかったので断った。しかし、実際のシフトを見てみれば、「社会」が入っている。しかも経験のない中学受験の社会だ。事前に何の連絡もなかった。

塾長に相談したところ、「難しくないし、しっかり教えるから大丈夫。人が足りないからお願いします。」とのことだった。この時は、指導付きという条件で引き受けた。しかし、指導というのは授業30分前に10分程度エッセンスを教えられ、その後すぐに授業で実践せよ、というものだった。事前に指導を受けて覚えてくることも考えたが、私の都合が上手く噛み合わなかった。

こうして、全く経験のない科目を即興で理解し実践するという、高額な授業料に全く見合わないサービスを提供することになった。確かに教えるべき内容は少なく、社員の指導は丁寧だったが、自信を持って授業を出来る訳がなかった。先の研修よりもひどい有様だ。科目の知識もない素人が授業をしていると知ったら、保護者の方はどう思うのだろうか。もちろん、この科目からはすぐに降りた。

事前に予習をすれば問題ないのでは、という批判もあると思う。確かに教科書は与えられていたし、予習することも可能だった。だが、講師として授業をする以上は教科書+α の内容を伝えられなければ意味がない。受験知識をベースとして、覚えるポイントを絞った授業をする必要がある。予習だけでこのレベルまで到達するには、実際の過去問を見るなど、かなりの予習時間が必要であるし、社会だけに時間をかけている余裕はない。もし真面目に行えば、時給に見合わないブラック労働と化してしまう。労働時間については人それぞれの価値観に依るものだから、このくらいにしておく。だが少なくとも、他校舎から応援を呼ぶくらいは出来たはずである。

 

講師のレベルチェック方法

さて、新人が素人丸出しの状態で現場投入されることは、十分お分かり頂けたと思う。2回目でくどいが、あくまでも私の実体験の話なので、すべての塾がこのような有様でないことはご理解頂きたい。だが、この大手塾ではお粗末な新人研修を受けた素人が現場に出ているのも事実だ。

ただし、新人のレベルは人によって様々である。他塾での経験がある新人講師もいる。

ここからは担当講師のレベルチェック方法を簡単に紹介する。特に担当の講師が若く見えるほど試してほしい。ただ気を付けて欲しいのは、学生の学歴・年齢・経験年数・連絡先などの個人情報については、塾側は一切教えてくれない。

 

基本は受験知識のチェック

塾講師の経験年数やレベルは、受験知識の有無で簡単に判断できる。手始めに、子どもの志望校の短縮名を会話に混ぜてみるといい。

例を挙げよう。中学受験で女子学院を目指しているなら、「JGの過去問ってどんな対策が必要ですか?」などの質問をしてみるとよい。JG=女子学院を知らなければ、確実に経験未熟な新人講師である。「難しい中学なので、まずは基礎を固めましょう」、とだけ言うのなら、過去問を見たことがない新人講師か、業界に疎い中堅講師である。逆に、女子学院の傾向を踏まえた上でしっかり回答をしてくれるなら、信頼度が上がるとも言える。

高校受験を担当する講師もチェックの仕方は同様だ。首都圏高校対策の講師なら、「都立高校の配点比率(調査書と当日点の比率)」を答えられなければ完全に新人だ。私立志望でも、有名校の過去問傾向や特徴を大まかに答えられなければ、経験の浅い講師だと言える。

一概には判断できないが、受験知識を欠いている講師(=新人)は授業が上手くない可能性が高い。

 

「高学歴=良い講師」とは限らない

講師個人の科目レベル(=解答能力)について勘違いされている保護者の方が多かったので、最初に言っておきたいことがある。それは、講師自身の学歴と授業の質はあまり関係ないということだ。塾講師は偏差値よりも経験年数の方が重要である。講師側も分からない問題は事前にチェックして授業を行うので、授業中に支障をきたすことは無い。出身大学の偏差値が低めでも授業が上手い講師は大勢いるので、学歴はそこまで気にしなくてよい。実際、上位クラスの担当以外は、高度な解答能力よりも授業運営力の方がよほど重要である。

 

科目レベルのチェックは難しい

逆に、上位クラスの講師にはある程度の解答能力が求められる。過去問対策の授業や生徒対応の難易度が上がるからだ。ただ、講師の科目レベルをチェックするのは非常に難しい。学歴や偏差値を知ることが出来ないからだ。そこで、ここでは私が研修時に行った英語のテストの例を挙げよう。実際のところ講師がどれ程のものか、確かめて欲しい。

ある研修時に、有名私立高校の英語問題を渡され、新人もベテランも一斉に問題を解いたことがある。問題のレベルは、当時TOEIC700点台だった私が解いた場合、時間が余った上で満点が取れるくらいだった。他の先生は既に終わっているのかと周りを見ると、新人は意外と早めに解き終えていて、ベテランほど粘っている印象が強かった。この辺りは受験経験が近い若手の方がスピード的に有利か、と納得できた。

採点後に周囲の点数をこっそり確認したところ、100点満点で65点くらいが平均だった。満点は私含め4人程度。合格点は70点前後なので、半分以上が不合格である。模擬授業で散々偉そうに上位校の対策を語っていたベテラン講師が、生徒よりも低い点数を取っていたことには失望した。勉強などしていないのだろう。金銭を受け取るプロとして失格ではないか

中堅クラスならば解答能力は必要ないが、上位クラスのベテラン講師ほど解答能力が落ちている印象を受けたので非常に残念だった。保護者の方がこの事実を知ることは出来ないので、なんとも歯がゆい気持ちである。

 

まとめ:サービス向上を意識すべき

世の中には、保護者と生徒を侮辱するような大手塾があることを知って貰いたい。しかも、会社の責任者たちは現状を理解した上で、形骸化した研修を行ったり、未経験の科目を担当させたりと、サービス向上に対する責任意識が見られない。本社の経営層と現場校舎の連携が上手く取れていないことも要因の一つだろう。

穴を埋めるために素人同然の新人を現場投入し、生徒はそれを楽しいと言って帰ってくる。上位クラスの講師が生徒より低い点数を取ることもある。保護者より受験知識のない講師が堂々と進路相談をする。このような塾はあってはならない。

顧客の満足度向上を目指して有意義な研修を行い、講師のレベルを底上げすることが必要である。合格実績や塾の規模ばかり意識してサービスの質を落とすようでは本末転倒だ。まずは内部サービスの向上から取り組んでほしいと思う。

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