キャリア

あなたの市場価値をブチ上げる2つの方策

Keito

データアナリスト / 経営学修士 趣味はプログラミング、Nintendo Switch、カラオケです。

本稿では、転職における「市場価値」を高めるための方策を提案します。本稿で扱う内容は、すべて経営戦略に基づいたものになっており、「そもそも市場価値とは何か」といった定義から、「市場価値を高めて維持する方策は何か」といった点をカバーしています。

Google検索でみられる多くの記事では、「スキルや実績、実力や経験を備えた人」が市場価値を高められるとしています。しかしそれらの記事は、「市場価値」の意味を捉えきれていません。本稿ではこれを経営戦略の観点から解き明かします。

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「市場価値」とは何なのか

転職活動における市場価値とは、「志望する企業にとって、その人材がどれ程必要か」と定義することが出来ます。企業はこの市場価値に対して対価を支払います。その対価、つまりは市場価値を表す指標が年収となります。提示される年収が高ければ高いほど、その企業におけるその人の市場価値は高いと言えます。

しかし、市場価値はどの業種や企業でも同じ程度になる訳ではありません。国や業種、各企業において、求められている技術レベルやスキルセットは異なるため、ある企業による市場価値の算定が他の企業でも当てはまることはないのです。

したがって、転職で自分の市場価値を伝える際には、企業サイドの視点を持つ必要があります。その企業がどんな事業を運営しているか、いまどんな人材を求めているのか、といった情報を得ることで、自分をより魅力的な人材としてアピールすることが出来ます。

市場価値の決定要因を知らなければ、行動しても意義が薄い

それでは、市場価値を高めるためにはどうすればよいのでしょうか。市場価値を高めるには、市場価値を決定づける根本的な要因を知る必要があります。

市場価値が何によって決められているかを知らなければ、スキルを上げるための各行動はムダになってしまいます。なぜなら、それらの行動が市場価値を高めるとは限らないからです。逆に、市場価値の決定要因を知っていれば、効率的に転職活動を行うことが出来るでしょう。

市場価値の決定要因は「必要性」と「代替性」

経営戦略論に基づく議論

ここで、経営戦略の論点を引き出してみます。経営戦略論に基づくと、ある事業の収益性を左右する要因は、「必要性」と「代替性」の2つです。必要性とは、その事業が市場でどれだけ求められているかという程度のことであり、代替性とは、その事業が競合企業に奪われやすい程度と言うことができます。

経営戦略論に基づくこの2つの要因は、転職活動における市場価値の議論にも適用することが出来ます。つまり、「事業」を「人材」に置き換えればよいのです。市場で求められているスキルを有し(必要性が高い)、かつそのスキルを持つ人材が希少であれば(代替性が低い)、その人材の市場価値は圧倒的に高まります。

このように、自分の市場価値を高めるには、必要性が高く、代替性が低いスキルセットや実績を身に付ければよいということになります。本稿を執筆している時点ならば、このような人材はデータサイエンティストに当たるでしょう。求められる技術水準が高いために人数が少なく(代替性が低い)、かつ企業がデータ分析を行う際に必要であるため(必要性が高い)、データサイエンティストの年収は高くなるのです。

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コンサルタントの市場価値は高いのか

ここで、一般的に市場価値が高いとされるコンサルタントについて考えてみましょう。コンサルタントは、現在では多くの人材が市場に参入しています。これは、コンサルティング会社の採用人数が増えたからです。コンサルタントの需要が増したといっても良いでしょう。さらに、どの人材も総じて高いスキルを有し、海外MBA卒などもちらほら見かけます。

このような状況になっては、コンサルタントの市場価値は将来的に低くなると言わざるを得ません。代替性が高まった(他の人材に取って代わられやすくなった)ことにより、人材の相対的な価値が低下するということです。これは、一個人の能力に由来するものではなく、市場の構造から来る要因です。

それにも関わらず、新卒就活生の上位層は、コンサルティング会社を強く志望しているのが現状です。彼らの目的は、自らが圧倒的に成長できる環境と、他の業種とは比べ物にならない高水準の年収でしょう。成長性という観点では、確かにコンサルタントは必要な条件を備えています。

しかし、代替性が高まっているという状況を考慮すれば、これからコンサルタントを目指すのは得策とは言えないかもしれません。同じスキルを有した人材が増えるにつれて、その人材の相対的な価値は低くなり、それに応じて年収も規定されるからです。

転職についてもこれは同じです。一般的には、コンサルタントに就くと、普遍的なスキルセットを身に付けられると言われています。スキルが普遍的であれば、他社においても市場価値を高められるため、年収UPが期待できるという論理です。

確かにその側面もあるでしょうが、転職を考える際には、「そのスキルセットは本当に他社でも使えるものなのか」「コンサルタントとしての仕事は将来も安定して存在するのか」といった要因を考えなければなりません。普遍的だと思っていたスキルが他社で通用しない場合や、将来そのスキルを有する人材が溢れかえった場合、人材の市場価値は一気に下落して、年収も下がってしまいます。

注意してほしいのは、本稿がコンサルタントを批判しているわけではないということです。あくまでも、市場における人材の動向によって、コンサルタントの市場価値が決定されるということを述べています。

以上のように、現在において市場価値が高いと言われている職業でも、その将来性を考えると費用対効果は悪いかもしれません。重要なのは、自分が持つスキルや実績の必要性と代替性を考慮することであり、それらが将来どの程度求められるかを見定める必要があります。

市場価値を高めるための方策は2つ

さて、人材の市場価値が決まる要因をご理解いただけたでしょうか。ここからは、市場価値を高める大枠の作戦を2つ提供します。本稿では、「スキルや実績を上げる」「キャリアプランを立てる」などの狭義的な策ではなく、さらに大局を見据えた方針を提供します。

一点注意しておきたいのは、本稿が年収UPのための転職を扱っている点です。あくまでも、キャリアの途中で転職することを前提としているため、安定的な長期の雇用を目指している人(終身雇用等)には、本稿の議論は当てはまりません。

①市場のトレンドを捉え続ける

1つ目の方策は、そのとき市場で求められているスキルに対して迅速にキャッチアップし、市場のトレンドに乗り続けるという方針です。データサイエンティストの例を用いれば、データ分析が必要だと気づいた時点で統計や機械学習を学び、データサイエンティストとして活躍します。

この作戦では、常に必要性が高く、代替性の低い職業に就くことが出来るため、年収は安定的に上昇していくことが見込まれます。ただし、企業で求められるスキル水準に達するためには相応の学習が必要であり、文字通り生涯学習というキャリアを歩むことになるかもしれません。

せっかく就いた職業でも、人材の総量が増えれば増えるほどに、その職業の代替性は高まってしまいます。すなわち、市場が飽和すればその職業の年収は低くなってしまうのです。このトレンドの節目に気づくことが出来れば、また別の職業へとキャリアチェンジを図ることになります。ここでも、必要性と代替性を考量することが重要です。

この方策では、長期にわたるキャリアプランを綿密に練ることが重要になります。なぜなら、キャリアを積めば積むほど転職を実行しづらくなり、所持するスキルセットも固定されていくからです。若いうちに将来どんな職業で働きたいかを考え、その大筋に沿いながらも、市場のトレンドに合わせた職業を選択していく必要があります。

キャリアプランの「大枠」というのは、非常に大事な要素になります。いくら市場のトレンドを捉えたくても、マーケターとして専門的なキャリアを歩んできた30代の人材が、今からデータサイエンティストを目指すのは難しいと言わざるを得ません。企業側は、あなたが今までに築き上げてきた実績を評価するでしょうから、実績のない分野に参入することは困難です。つまり、自分が過去に選択したキャリアによって、次のキャリアの選択肢が決定されるという問題があります。

したがって、転職を図る際に重要なのは、ある程度の市場トレンドを予測しながらキャリアを選択するということです。将来需要が高まりそうな分野に参入していれば、そこから新たなトレンドに乗ることは難しくないでしょう。このように、市場のトレンドに乗り続ける方策を取る場合は、3~5年ほどの短中期の市場需要を見据えたキャリア選択が望ましいです。

②「今は」人気がない職業を目指す

2つ目の方策は、現時点では求められていないものの、将来需要が高まる職業に就くことです。

例えば、インターネットが登場した初期は、Web技術を有する人材が圧倒的に少なく、技術者の市場価値は低いものでした。しかし、現在ではWeb作成者やフロントエンジニアが台頭しているように、技術者の市場価値は高まっています。これは、企業がインターネットを用いたビジネスを展開し始めたからです。

データサイエンティストにも、同じ議論が当てはまります。データ分析は、近年になって需要が急拡大した技術です。企業はこれまで、蓄積したデータを事業の改善に用いてきませんでした。しかし、GAFA等のプラットフォーマーが積極的にデータ活用を推進した結果、各企業はこれと同じ動きをするようになったのです。

この過程において、データサイエンティストの需要は飛躍的に高まりました。この職業には高い技術水準が求められるため、必要性と代替性の議論を十分に満足しています。そのため、現在では自明なように、データサイエンティストの年収は高水準です。早期から活躍していた人材は、業界のパイオニアとなり、周りよりもさらに高い給与と地位を獲得することが出来たでしょう。

本稿で提案したいのは、データサイエンティストのようなパイオニアを目指すという方策です。現時点では需要が低いもの、将来需要が高くなると予想される職業に就けば、高水準の年収を安定的に持続させることが出来ます。早期にその分野へ進出することにより、業界のパイオニアとなり、他の人材に対して代替性を低くすることが出来るのです。

以上のように、大きな利益を持続的に見込みたい場合は、長期的な視点で、将来必要とされる職業を見極める必要があります。この方策には、もちろんリスクがつきものです。せっかく就いた職業でも、その需要が期待したほど上がらなければ、高年収を獲得・維持することは出来ません。リスクとリターンは、相殺される関係になっているということです。安定的にキャリアアップを目指す場合は、①で述べた方策を取るのが望ましいでしょう。

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大枠の方針を決めて、具体策を絞り込む

以上の2つが、市場価値を根本的に高める方策となります。大枠の方針が決まれば、次はより具体的な行動を起こし、自分のスキルを磨く段階に入ります。

この段階では、自分の目指している職業が、企業においてどのような立ち回りをするかを理解する必要があります。データサイエンティストならば、企業内外からデータを集める部分から、データを分析して戦略を提案する段階までが仕事です。もちろん、この過程のある部分を重点的に担当する職種もあると思います。

重要なのは、その職業に何が期待されているかを把握することです。技術職だから技術レベルが高ければ良い、という議論が当てはまる訳ではありません。具体的な業務内容のレベルまで理解を落とし込むことで、自分が身に付けるべきスキルがはっきりしてきます。データサイエンティストなら、データ分析の技術だけでなく、分析体制を整えてプロジェクトを実行に移していく力や、基本的なビジネススキルが必要になります。

このように、市場のトレンドを捉えたとしても、その職業がトレンドの中でどのように使われるかを理解しないと、希望に見合った企業には転職できません。企業側は自社内での立ち回りを理解しているので、転職者側から提示されたスキルが期待通りでなければ、そこには当然ミスマッチが起こります。

このミスマッチを防ぐために、本当に必要なスキルが何なのかをしっかりと見極める必要があるということです。

まとめ

本稿では、市場価値を高めるための方策を議論しました。

市場価値を決定づける要因は、人材の必要性と代替性です。市場に求められていて、かつ希少な人材であれば、その人材の市場価値は飛躍的に高まります。これを実現するには、市場のトレンドを捉え続けたキャリアを目指すか、「今は」穴場の職業を見つけて、将来の需要増に期待するという、2つの方策があります。

転職の際に考えるべきは、以上のような大枠の方針を据えた上で、資格の勉強やスキルアップといった具体的な行動を起こすことです。最初から闇雲に行動しても、それが自分の市場価値を高めるとは限りません。市場のトレンドを予測し、それに合わせたスキルを身に付けることが重要になります。

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